Saturday, December 17, 2011

COD Zombies / Mafia vs Ninja

一時期、名作に飽きてしまいロベルトロドリゲスの映画にハマったりしていたが、それにも飽きてしまい、しばらく何も観ない事にした。「好きな事が何故か面白くない」のは、本当に辛い事だ。生きている感じがしない。

 ただ、中毒とは恐ろしいもので、急に何かを止めてみても、それまでその為に割いていた時間が宙ぶらりんになってしまって、どうも落ち着かない。その間、映画を観ずに、ただひたすらプレステで Call of Duty/ゾンビ殺しに費やしてみた。初めは暇つぶしのつもりだったのだが、これがガッツリハマった。

ハマる要素が満載だった。

精緻なグラフィック、やり込む程に制作者の意図が伝わってくるマップ、しかも丁度「飽きて来たな〜。」と思う頃に定期的に新しいマップがリリースされるため、ダウンロードすればまた新しい世界で遊べる。
キャラ達も自虐的な人種差別ネタのシャレがきいてて笑えるし、でもそのバックグラウンドにあるストーリーは意外と巨大で興味深い。。。。しかも一部はNight of the Living Deadのジョージロメロ監督が監修しており(カメオ出演あり)、ゾンビ映画ファンのハートもガッチリキャッチしている。
3Dシューターでありながら、ゾンビの動きは完全に8ビットゲームのそれで、その法則を見つけてしまえば、迫るゾンビ達を紙一重でかわしながら自由自在に動けるようになる。
この「全能感」にも似た感覚がたまらなくて、時に徹夜も挟みながら、朝から晩までひたすら画面の前に座っていた。ゼロ歳児と二人で(汗)。。。。
轟く銃撃音、飛び散るゾンビの頭。これは見せちゃダメだよな〜。情操教育上、大問題な気がする。でもやめられない。。。。

そんな、終わりの無いループに思えたゲームも、先日ついに飽きた。急に何かがリセットされたような、不思議とブランクな気分になった。

久しぶりに映画でも観るかと、近所のビデオ屋に寄ってみた。

じっくりとチェックしてみたが、これといってパッとした一本が見つからない。
こんな時は、店員の兄ちゃんに相談するのが賢い。
「最近B級映画にも飽きてて、ゲームばっかりやってたんだけど〜」などと下らない近況報告から始まって、こんな時にピッタリな映画は何かないかと勧めてもらう。
「う〜ん、それは結構重傷だね〜。」と言いながら彼が勧めて来たのはShawn of Dead等のスプーフものが何本かで、どれも決め手に欠ける。
俺はもう何も面白くないんだろうか?などと、レンタル屋の兄ちゃんに絡んでいたその時、彼の後ろの棚の一番下の段にポツンと置かれているビデオテープのタイトルが、俺の目に飛び込んで来た。

"Mafia vs Ninja"

ちょっと待て。
何なんだあのビデオテープは?と訊くと、店員全員が知らないという。
手に取って見てみると、これ以上無いほどにチープで怪しい。
忍者を謳っているくせに、キャストに日本人の名前が一つも見あたらないのも、非常にクサい。
ジャケットもこの上なく王道な仕上がり。
まるで、旅先のヤミ市で遺跡の盗掘品を見つけたときの様な、誰も知らない秘密に行き当たってしまったような、背徳的な興奮に包まれた。

これは、間違いない。今、まさにこんな映画を探しにココへ来たのだ。
運命を感じた。
貸してくれ。ビデオデッキを持っていないが、そんな事は関係ない。というと、
店員がテープを一通り眺めて一言、「ゴメン、これはレンタルじゃないよ。」という。

売り物か。いくらなんだ?というと、ステッカーが貼ってないので、店のものでも無さそうだという。
持ち主はおろか、出所も不明とは。
何とか貸してくれ、明日には必ず持ってくる、何なら俺の免許証を置いて行くからと食い下がったが、
「オーナーに明日訊いてみるから、明日のこの時間に来てくれ。」と丁寧に断られた。

 次の日、はやる気持ちを抑えきれずに早めにビデオ屋に行くと、昨日の兄ちゃんが
「待ってたよ〜!」と言ってテープをカウンターにドン、と立てた。
True Romanceのブラッドピットよろしく長髪にヒゲの、いかにもストーナーなこの男、素直に売ってくれるのかと思いきや、パソコンをカタカタやったかと思うと、
「アマゾンでは$27でうってるな〜。」と言い出した。
そりゃいくらなんでも高過ぎると交渉し、嫁に怒られながら$13で購入した。

 後日、カフェの地下室にビデオデッキがあるのを思い出し、そこで上映会をする事になった。メンツはヨルダン人のボスと俺、それにイタリア人のAliceの三人。ジャパニーズ対イタリアン。

マフィアと忍者の戦いを観るのに、これ以上無いメンツだ。
煙にむせぶ地下室で、映画は始まった。

 画面が映った瞬間から、あまりの画質の悪さに一同爆笑。かと思えば、一分も立たないうちにいきなり始まるカンフーアクション。
これが意外にも相当なクオリティの高い動きで、それにまた驚く。


 流れ者の主人公は、ひょんなことから上海のマフィアの親分を助ける事になる。彼等は今、新興の組と抗争中なのだ。
人情味のある親分は地元でも慕われている名士で、かたや新興の組は上海進出を目論む日本人と結託して、街を牛耳ろうとしていた。彼等はその手先として忍者を使っていた。
主人公は、親分の危機を得意のカンフーで何とか救ったものの、日本人達は金にモノを言わせて、今度は白人と黒人と日本人からなるプロの殺し屋を雇い、襲って来た。自分達の不在の間に、街は日本人達に略奪、皆殺しにされてしまう。
復讐を誓う中国人達。死闘の末、上海の街を日本人の帝国主義から救うのだった。

撮影は1984年。日中国交正常化が72年、日中平和友好条約が78年だった事を鑑みて、どれほど現地で反日/好日が世俗的に浸透していたのか知る由もないので、これがどれほど冗談だったのか本気だったのか量りかねるが、どちらにしても日本人の描かれ方の非道さには心底笑える。
しかし同時に、いつでもメディアが描くものは世相を反映しているという観点に立つならば、彼等の日本人やヨーロピアンに対する開けっぴろげな差別は無邪気で恐ろしくもある。

とにかく初めから終わりまで90分間、ゲラゲラ笑った。笑いすぎて疲れた。
差別を描く事で逆にあぶり出されている、あからさまな逆差別や、秀逸なカンフーアクション、疑問の多いエディット、そこここに散りばめられているゲイ的なサービスショット、チープな80年代的シンセサウンド満載(もちろん無断だと思うが日本人のシーンで喜多郎も使われてた)、おおよそ殆どの台詞が、ストーリーを説明する為に費やされているプロット等、突っ込みどころ満載のリッチな一本だった。
アクション、ロマンス、特撮、ポリティクス等、監督のロバートタイがやりたい事をぎゅっと詰め込んだ、珠玉の作品。天才じゃなかろうか。

ちなみに、もうお気づきかもしれないが、イタリアンマフィアは最後まで出てきませんでした。ごめんね、Alice。マフィアって、中国マフィアだったのね。

Youtubeに、フルで上がってたので貼付けておきます。Enjoy。