Friday, February 18, 2011

不思議惑星キンザザ



昨晩、何か洗い物でもしてる時に、突然この映画を思い出した。
この映画について、初めて耳にした時から20年、何故か今まで観た事が無かった。
そして昨日観たこの映画は、丁度20年間ためていた宿題を消化した様な、何とも言えないいい気分にさせてくれた。

買い物に出たヴォヴァと、そこにたまたま通りかかったフィドラー(バイオリン弾きの意)は、街角で声をかけて来た狂人と思わしき人物と関わった事で、突然遠い宇宙の何処か彼方の世界へと移動してしまう。そこは水が枯れ果てた惑星プリュクだった。そこには地球人類そっくりの人間達が、全く違う文化道徳を持った社会を作って暮らしていた。全ての社会的規約は、彼ら二人にとって意味をなさない不思議で不条理なものばかり。見た目も出身地も同じ人間の間に人種差別があったり、マッチが非常に価値のあるモノだったり。
星の住民同士は基本テレパシーで意思疎通を取っており、言葉は「キュー(罵声)」と「クー(それ以外の言葉)」しか無い。しかし、相手の思考がよめる彼等は、二人の話すロシア語をすぐに理解した。全く常識の通じないこの世界から、二人は地球に無事戻れるのか?

監督のレオニード ガイダイは、遠い宇宙の何処かになぞらえて、この俺たちの住む世界を抽象的にユーモラスに描いている。
そうする事で当時検閲の厳しかったソヴィエトの政府を欺き、体制批判を行っていたという。
しかし、本当にそうだろうか?俺には、彼は作りたい物を作りたい様に作っただけにみえる。
もちろん社会体制の批判はメタファーとして含まれているが、意図的に隠してあるというよりは、単純に体制側の人間が、この映画の言わんとしている事が分からなかっただけだと思う。この人みたいに。
そして彼の描かんとしている世界は、俺が物心ついた時から持ち続けて来た大きな疑問を代弁している。

貨幣って何?
それを発行している政府が破産しているのに、何故その貨幣がまだ流通していられるのだろう?
法律って何だ?
もし法律が自由というものを保証しているなら、そこに制約がある時点で自由という概念を自ら否定していないか?
罰金って何?
何故皆、駐禁の罰金を払ったりするんだろう?
誰に、何の為に払ってるんだ?何でそれに値段が決まってるんだ?誰が、何を尺度に決めたんだろう?
土地の所有という概念って何だろう?
土地って誰かの物なんだろうか。元は誰のモノでもなかった筈だから、何千年か前にそれを初めに売った奴が居る筈だ。誰だ、そんなゲーム始めた奴。
17歳の頃、こんな社会の基盤となっている筈のルール達の殆どが、考えれば考える程全く意味を成していない事に気がついて、俺は心底恐怖を感じた。

何で敬語って使わないといけないんだろう?使わなかったら怒る人もいるし、そもそも何故そんなものが出来たんだろう?
FUCKって単語を付けると、なぜ下品になるんだろう?それ自体に何の意味も無いのに。
Fuck youってどういう意味?アメリカ人に聞いても、誰も知らない。
ならば、何故その言葉の意味する所が分からないのに、それを言われると怒れるのかが、また分からない。
裁判官って何故、人を裁く権利があるんだろう?
パスポートとか、ビザって何?
そもそも権利って何だ?義務とは?

でも、年を重ねて、人間というモノがどういう生き物であるかやっと分かり出して来て、怖くなくなって来た。
きっと、ガキの頃の俺は、世界というものが完璧である状態をベーシックに物事を捉えていたんだと思う。
だからシステム自体に不正や矛盾が有る事に、ものすごい生理的嫌悪感があったんだと思う。
生真面目だったんだと思う。

17歳の時にこのフィルム観てても、きっと理解出来てなかったと思う。
でも、今は死ぬ程笑える。

では、英語字幕ですが、下記より全編お楽しみ下さい。

不思議惑星キンザザ part1
不思議惑星キンザザ part2

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