Friday, August 13, 2010

Bottle Rocket



 このところ、Werner Herzog の古い映画ばかりまとめて借りていたので、ざらついた画とダークな世界にどっぷりだった。宇宙や自然と、それと対峙する人間を通して真実を見つめようとする彼の視線には、いつもそのヘヴィなテーマとは何か対照的な、人間愛に溢れたヒューモアが見え隠れして思わずにっこりさせられるのだけど、さすがに毎日観るのはキツい。今日は何か清涼感のある映画が観たいと、近所のLost weekend videoに物色しにいった。そうそう、清涼感のある映画といえば、やっぱ Wes Anderson だよな〜、と名前を探していると、彼の長編デビュー作「Bottle Rocket」がブルーレイで入荷してる!!迷わず借りて、速攻帰宅。昼にファーマーズマーケットで買った桃でも食べながら、ゆっくりしますか?
 
 Anthonyは、地元を離れてアリゾナの保養施設に居た。彼にはちょっとハイパーな友達が居て、名をDignanという。彼等ともう一人、Bobの三人は、どこか憎めない間抜けな泥棒。といっても、別に本当に泥棒なのではなく、三人はそれぞれ典型的な裕福な家庭の出で、お金が目的なのではない。彼等はテキサスの新興住宅地に暮らす、人生に苦も無ければ楽も無い、明日の心配も無いけど未来の夢も無い、そんなイマドキどこにでも居そうな若者(映画は96年公開だが、イマドキ多そうな人間を描いているのが興味深い)。
ボブは兄貴がギャングで、いつも兄に対して「俺だっていつかは」とコンプレックスを抱いて生きている。
ディグナンは夢想家のほら吹き。自分の願望を、さも現実の様に喋ってしまう。
そしてアンソニーは、そんなディグナンの無謀とも言える活発なエナジーに憧れを抱く、積極性に欠けるフツーの男。

 ある日、ディグナンがアンソニーを迎えに病院にやって来た。その帰りの道すがら語られる、次の計画。アンソニーにとって、それは何でもよかった。ほら吹きディグナンと、一緒にバカな事を一心不乱にやるという事、それがアンソニーにとって唯一の心躍らせる瞬間だった。アンソニーの実家に空き巣に入り予行演習を済ませた彼等は、地元の本屋に強盗に入る。その成功の祝杯をあげる時、隠れ家にしていたモーテルで、アンソニーは初めて自分から積極的に動きたいと思わされる出来事と出会った。美しいメイド。南米からやって来た英語も喋れない彼女と、彼は言葉を超えた恋に落ちる。しかし、なぜかディグナンは彼の初めての自立を祝福してくれない。深まる三人の溝。そして時は経ち、、、、、、。

 これといって派手な事件もなければ、哲学も思想も無いこの映画。でも三人のそれぞれのキャラと、それが織りなす人間模様はどれもすごく make sense で、大なり小なり見覚えのある誰かに似てる気がした。
きっとアンソニーは、平凡な自分の人生に華を添える方法を知らなくて、出口の無い閉塞感に捕われてる。どうやっても人生は想像の範囲内で、その外側が想像出来ない。だからきっと彼にとってディグナンの存在は、その檻をぶち破るための鍵なんだと思う。
ディグナンは夢想家で、いつもエキサイトして暮らしているけど、きっとそれは友達と何かをやっていたいだけで、子供の時の感覚の延長なんだと思う。
ボブだって力が無い訳じゃないし、本人もそれを知っているけど力の出し方とその場所が分からないだけなんだ。
自分にも、こんな三人組になった事、昔あった気がする。

もしかしたら、今もそうかもしれない。
でも、大人になって学んだ事は、一人で全部出来る力がなければ、何かを人とやる事は出来ないという事。
ディグナン観てると、懐かしくて悲しくて、でも笑えるんだよね。
 

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